ブロック・ターナーの父、ダン・ターナーの声明文全訳 | 葉的MANHATTAN☆HOUR
<< スタンフォード大学 強姦事件加害者ブロック・ターナーの声明文(全訳) | main | スタンフォード大学 強姦事件 テキサス州テッド・ポー下院議員の米国議会でのスピーチ(全訳) >>
ブロック・ターナーの父、ダン・ターナーの声明文全訳

【2016.06.21 Tuesday 09:53

ブロック・ターナーの父、ダン・A・ターナー氏が判事に宛てた刑の減免を求める手紙の全訳です。前回に引き続き、翻訳後に友人の中村美和氏(ツイッターアカウント、@MiwananaFFS)に訳文をチェックしていただき、精査しました。

ターナー氏の手紙に対し、ノース・カロライナ州在住の牧師、ジョン・パヴロヴィッツ氏が送った公開書簡「ブロック・ターナーの父親へ、もう一人の父親より」も掲載しています。どうぞ、合わせてお読みください。

*********************
アーロン・ペスキー裁判官殿

   この手紙を、我が息子ブロックがどのような人間なのかお伝えするためにしたためています。まず申し上げたいのは、ブロックは2015年1月17日と18日に起こった出来事のせいで絶望に陥っているということです。時を戻してあの晩をもう一度やり直せるなら、どんなことだってするでしょう。あの日から何度もブロックと一対一で話しましたが、あの晩起こったこと、あの晩に関係しており影響を受けた人々全員が被った痛みと苦しみについて彼は本当に申し訳ないと感じています。あの晩の行為について、真実の後悔を示しているのです。あの事件以来ずっとブロックと同じ屋根の下で暮らしてきて、我が息子がどれだけの打撃を被ったか、直接申し上げたいと思います。けれどもその前に、彼の人となりを示す幾つかの思い出を共有させてください。

   ブロックは人なつこい性格で、どんな人に会ってもすぐ打ち解けます。相手が男だろうが女だろうが、人に好かれるのです。幼稚園から今に至るまでそうです。誰かに怒鳴ったり、誰かに偏見を持ったりするところを見たことがありません。その人そのものを受け入れるのです。とても優しくておとなしい性格で、誰にも好かれる笑顔の持ち主です。自分のしたことを自慢したり威張ったりするのも聞いたことがありません。自分の成功について話すよりも他の人の達成したことについて聞きたがる、極めて謙虚な人間なのです。ブロックには、私が他の人において見たことのない内的な強さがあります。水泳の競争で何年もやってこられたのもそのおかげでしょうし、過去15か月をなんとかやってこられたのもそれが主な理由です。

   ブロックはいつも、学問であろうとスポーツであろうと、あるいは友人関係や恋愛関係であろうと、常に極めて献身的な人間です。ブロックの学問への献身は小学校に遡ります。私のいちばん好きな思い出は、ブロックの毎週の綴り方テストを手伝っていたことです。こうしたテストで良い点を取るのはブロックにとってとても大切なことだったので、彼はすべてちゃんと覚えているように、前の日から言葉を暗記しはじめていました。テストでうまくやれるように、私に何度も質問を繰り返さねばなりませんでした。金曜日の朝、息子を学校に送っていくとき、息子は私にテスト前の最後のクイズをしてねとせがむのでした。そしてブロックはいつもそのテストではいい点を取ったことも、申し添えておきます。つまらない例に見えるかもしれませんが、これは彼がその後も学問の達成を重要視し続けた、初期の証拠と言えましょう。年齢を重ねて学年も上がるに従い、息子は非常に複雑な問題でも理解する能力を持っていましたので、私の手をそれほど必要としなくなりました。この自然な能力と、極めて強い倫理観は、息子をあらゆる面における学問的成功に導いたのです。

   ブロックはまた、野球、バスケットボール、水泳などの運動にも同様に秀でていました。私は息子が小・中学生のあいだ、彼の野球とバスケットボールのコーチであり、ボーイスカウトのリーダーでもありました。息子のコーチやリーダーとして参加し役に立つことは、息子との時間を共有することでもあったので、私には大きな誇りでした。私はまた父母代表付き添い役として何回も遠足に付き添いましたが、多くの場合父親として付き添ったのは私だけでした。ブロックがあまりにも一緒にいて楽しい子だったし、いつも他の子どもや親たち、先生たちに敬意を払っていたので、こうした一瞬一瞬が私には宝だったのです。この年月の記憶を私は永遠に愛し続けるでしょう。

   ブロックの高校2年の夏が終わるころ、息子は学問においても運動においても発揮していた才能を次のレベルに引き上げるべく、スタンフォード大学に応募しました。ブロックは水泳での成功記録と学校での成績のおかげで、第一部門の多くのコーチから注目されていたのです。彼の達成記録のおかげで、たくさんの大学コーチが息子に関心を寄せていました。けれどもスタンフォードこそブロックが目指していたものでしたし、こんなに長い間頑張ってきた人間にとっては最高の栄誉でした。ブロックと私は、彼が高校一年生から二年生に進級する夏にはじめてスタンフォードを訪れました。ブロックはそこで、USAジュニア・ナショナル戦というはじめての全国レベルの水泳競技会で競っていたのです。二人ともキャンパスの素晴らしさ、水泳施設、そして大学の豊かな歴史に感銘を受けました。その時、こんな学校に行けたら最高だとブロックに話したのを覚えています。スタンフォード出身のオリンピック水泳選手のことを考えただけでも信じられません。この最初のスタンフォード訪問は、ブロックに、深い印象を与えました。2013年の秋、ブロックがスタンフォードに入学許可されたと知った時、我が家族は誇りでいっぱいの気持ちでした。それまでにどれだけ努力してきたか知っていたので、最高の出来事でした。我々が最も誇りに思ったのは、ブロックが運動選手として奨学生になる前に、学問の成功を認められたことです。その年の合格率が4%だったことを考えると、これは特筆すべきことでした。ブロックは大学から60%の水泳奨学金をもらいました。このように寛大なオファーを頂いても、私と妻はブロックがスタンフォードに通うためには経済的に苦しくなるのを知っていましたが、スタンフォードでの教育の価値をよく知っていましたので、なんとかするつもりでした。ブロックの高校最後の年が終わるに連れ、息子は彼らしくスタンフォードに入学許可されたことについては謙虚で、高校最後の瞬間まで学問にも水泳にも力いっぱい打ち込んでいました。

   2014年の9月、カーリーンと私で新学年を迎えるブロックをスタンフォードに送った時、私たちは息子が新しい経験を積んでいく準備が完璧にできていると感じていました。何度も全国レベルの水泳キャンプに行っていたし、家から離れるのにも慣れていたからです。新入生の運動選手としてあの新学期にブロックがスタンフォードに移ることに、私たち両親もワクワクしていました。新学期には水泳チームの新入生の中、学問上トップの成績も収めました。私たちが気づいていなかったのは、ブロックが家からこんなにも離れて寂しがっていたことです。ブロックは学校と水泳の厳しさに馴染めるよう一所懸命でした。クリスマス休暇で帰ってきた時、ブロックは、みんなの中に馴染みたいと苦労していること、家から遠く離れて辛いと告白しました。水泳のトレーニング・キャンプで早めにクリスマス休暇を切り上げて戻らなければならなかったことで、息子は気落ちしていたようでした。冬学期にスタンフォードに戻ることが正しい選択なのかさえ疑問に思ったものです。振り返ってみると、ブロックが必死にスタンフォードの文化の一部になろうと努力し、飲酒とパーティーの文化に陥ってしまったのは明らかです。この文化は水泳チームの上級生がモデルとなり、2015年1月17日と18日に起こった出来事の要因となりました。スタンフォードにおけるブロックの短い経験を振り返ると、最適の状況ではなかったのです。学問的、また運動の面では準備が出来ていましたが、中西部で生まれ育った息子には、家から遠く離れすぎていたのです。家族や友達が近くにいるというサポートが必要だったのです。

   現在のところ、1月17日と18日に起こった出来事によってブロックの人生は大きく、そして永遠に変えられてしまいました。おおらかな性格と人好きのする笑顔の、楽天的な息子はもういないのです。起きている時間は心配と懸念、怯え、陰鬱な気分に沈んでいます。表情や歩き方、弱々しい声、食欲の減退からもそれは見てとれます。ブロックには好物があって、自分で料理するのも得意でした。私は息子がグリルできるようにリブアイ・ステーキを買ったり、息子の好きなおやつをあげたりするのが大好きでした。時には私の好きなプレッツェルやポテトチップスを隠しておかねばなりませんでした…ブロックが長い水泳の練習から帰ってきてそれを見つけると、すぐになくなってしまうからです。今、息子は食べものにもほとんど手をつけません。生きながらえるためだけに食べています。[有罪の]評決は息子と私たち家族をたくさんの方法で傷つけました。彼の人生はもう、長いこと夢に見、達成に向けて努力してきたものには二度とならないでしょう。20年余生きてきた中のたった20分の行為にしては、あまりにも大きな代償です。これから一生、性犯罪者として登録し続けなければならないことで、住む場所も、訪れるところも、仕事ができる場所も、人々や組織とのやりとりも制限されてしまいます。父親として私が知る限り、実刑判決はブロックにとって適切な刑ではありません。前科もありませんし、2015年1月17日も含め、誰かに暴力を振るったこともありません。ブロックにはいろいろな形で社会に貢献することができますし、息子は他の学生たちに、飲酒と性の奔放さの危険について警告できる素養が十分にあります。ブロックのような人間が大学キャンパスにおいて他の人を教育することができれば、飲み過ぎとその残念な結果という循環を断ち切る社会的貢献にもなるでしょう。この状況に鑑みると、ブロックには執行猶予が最適ですし、そうすることでポジティブな方法で彼が社会に復帰することもできます。

心からの敬意をこめて

ダン・A・ターナー

原文:

https://assets.documentcloud.org/documents/2852614/Letter-from-Brock-Turner-s-Father.pdf

**********************

ブロック・ターナーの父親へ、もう一人の父親より

ジョン・パヴロヴィッツ 

http://johnpavlovitz.com/2016/06/06/to-brock-turners-father-from-another-father/

ターナーさん

あなたがご子息ブロックのために、強姦罪有罪判決の減免を求めて書いた手紙を拝見しました。あなたに理解してほしいことがあります。あなたがあなたのご子息を愛するのと同じように、自分の息子を愛する父親として、申し上げます。

ブロックは、被害者ではありません。

被害者は、彼が被害を負わせたひとです。

傷つけられたのは、彼女です。

傷つけたのは、彼です。

もしも彼の人生が「大きく変えられた」のなら、それは、彼が他のひとの人生を「酷く変えた」からです。彼が自分の快楽のために、他のひとの弱みにつけこむという選択をしたからです。この若い女性は、あなたの子息が受けた恥ずかしくなるほど短い僅か6カ月の刑よりも、ずっとずっと長い時間、この事件の傷痕を背負って生きていくのです。彼の「20分の行為」のせいで、彼女は一生、考えられないような傷を負って生きていくのです。そして、あなたがこのことについてまったく気づいていないことそのものが、問題なのです。

だからこそ、若い男たちが女性を強姦し続けているのです。だからこそ、あまりにも多くの男たちが、女性の身体に対して、責任を負うことなしになんでもやりたい放題やっていいのだと思いこむのです。

だからこそ、性的暴力を被った被害者が、そのことについて公に問うことなく口をつぐむのです。

だからこそ、白人特権というものが実際にそして陰湿にはびこっており、特権を持つ者たちはそれに気づいてさえいないのです。

あなたが手紙の中で、ご子息をひとりの人間として描こうとしていること、彼のお気に入りのおやつや水泳の練習、そして父としてあなたが大切にしている思い出について判事に語りかけていることは理解できます。けれど正直言って、そんなこと、どうでもいいだろう、と思います。もし被害者があなたの娘だったら、あなたもそう思うでしょう。

この若い女性だってお気に入りのおやつやスポーツがあるでしょうし、ご両親も彼女のために素晴らしい人生を考えていたでしょう−—−こんな悪夢を含まない未来を。

あなたの息子が同情を受ける存在となる構図は、ここには存在しません。襲ったのは彼なのです。強姦したのは彼なのです。そうした現実がどれほど断腸の思いを呼ぶのか父親として私には想像できませんが、これが事実なのです。

ブロックが性犯罪者として登録しなければならないのは、彼が、抵抗能力を失った若い女性を性的に襲ったからです。だからこそ、こうした決まりがあるのです。たった一人の被害者に対する犯罪だって多すぎるからです。言葉にできないようなことをしてしまった時、やり直しは効かないからです。他のひとの持つ基本的な尊厳をこんなにも酷いやり方で踏みにじった人間が我々の社会に交じっている時、人々はそれを知ることで守られねばならないからです。

あなたの息子が事件以前にダンプスターの裏で他の女性を襲ったことはなかった、というのは、彼の信用を高める材料にはなりません。一生にたった一人しか強姦しなかったから誉められる、なんてことはないのです。あなたの息子をモンスターとは私は思いませんが、彼はモンスターのごとく振る舞ったことについては責任を負わなければなりません。確かに、この判決はブロックの人生すべてではありませんが、全体の諸要素の一つであり、大切なことなのです。

ターナーさん、はっきり申し上げておきますが、ここで問題なのは「飲酒と性の奔放さ」ではありません。ここで問題なのは、若い男性には選択肢があり、これらの選択肢が彼らを定義するということ−−−たとえそれが、誘惑と機会でいっぱいの状況で選ばれた選択肢だったとしても。事実、そのような状況下でこそ最も雄弁に、我々の人間性が顕れてくるのです。容易に掴みとることのできる悪に手をのばさず、品位と常識的な慎みを選ぶことによって。

我々親というものは、こどもたちを管理することはできません。ほとんどの親は、これを理解しています。そうさせまいと我々がどんなに努力しても、彼らは過ちを犯したり、我々が決して許さなかったことをしたりするのです。この状況もそうであったと思いたいのですが、あなたの書かれた手紙からはそれさえ伝わってきません。まるであなたは、ご子息の犯した犯罪の被害者に対してよりも、あなたのご子息の方に同情を集めたいように見えます。そしてそれは、被害者には、またこの事件を見ている若き男性や女性には、十分ではないのです。

彼女の話は、ここにあります。

あなたはご子息を愛しておられ、それは当然のことです。けれども、彼が酷い過ちを犯したことを教え、法の定めに従い社会に対し借りを返さねばならないと教えられるほどの強さをもって、愛してあげてください。彼が達成するとあなたが言う素晴らしい仕事をして償いの道を歩むのは、その後です。

いまはただ、一人の父親からもう一人の父親へ、申し上げます。我々がもっと良き道を歩むことを見せましょう。そうすることで、こどもたちにも良き道を示そうではありませんか。

 

author : watanabe-yo
| ことばの力、法の力 | comments(5) |

この記事に関するコメント
とてもいい年した息子のことを書いているとは思えません。まるで父親の言ってるのは、三歳の息子が幼稚園で女の子の髪の毛をひっぱっちゃったことへの言い訳のようです。しかも髪の毛をひっぱっちゃったせいで息子がひどく傷ついていますと言ってるような。こんな親では息子もあんなひどい犯罪を犯しもするだろうとしか思えません。なんだこの親子!怒りより呆れるのがまず先にきます。
ジョン・パブロヴィッツ氏の素晴らしい成人としての文章に救われます。が、この親子にこの文章のすばらしさは届くまい。理解できないでしょう。そのせいで全く彼らは救われまいと思わざるを得ません。親子で刑務所に入り、飴でもしゃぶってればいいのだと心底思います。
| かえみる | 2016/06/21 12:12 PM |
かえみるさん

100%同意。幼稚園、の譬えはまさに!! そう思います。
彼らにはパヴロヴィッツ牧師の言葉、多分、知性の問題として、理解できないんじゃないかと自分も思います。それでもそういう息子が名門大学に入れちゃうってなんなの? その名門大学が、被害者の救済をぐずぐずやらないってなんなの? 同じ大学卒で運動選手だった判事が量刑減免するってなんなの? そういうことに、今我々だけでなく、米国でも多くの人たちが怒っています。この「なんなの?」という疑問のエネルギーが、変えていく力になるよう、自分もできるだけのことをしたいと思っています。
| 葉 | 2016/06/21 12:58 PM |
葉さま
はぁ・・・
日本でもこういう親御さんは増えてるような気がします。
子供を守るというのはこういうことではないのに・・・
自分のケツは自分で拭くということを教えてやることだろうに・・・パヴロヴィッツ牧師の言葉に少し溜飲が下がりますが
被害に遭われた女性のことを考えると悲しみは消えません・・・
パヴロヴィッツ牧師の言われるように、もっと我々大人が良い見本をたくさん見せなければと思います・・・
| EIKI | 2016/06/21 8:58 PM |
ジョン・パヴロヴィッツ氏の言葉、尤もだと思います。
本当はいい子だとか、今まではいい子だったということで帳消しにしてもらえる類の罪じゃないと思います。
なんだろう、このどうしようもない噛み合わなさ…ターナー父にもターナーにも、どう説明しても伝わらなさそうな噛み合っていない感じを受けます。
昔、「偏差値が20違うと会話が成立しない」という話を聞いたことがあったけれど、それを正しいというわけじゃないけれど、でも何かこうどうしようもない隔たり、相違がある感じ。
加害者が被害者面するのは許せないです。

葉さん、訳して下さってありがとう。
| ねえねえ | 2016/06/22 12:32 AM |
管理者の承認待ちコメントです。
| - | 2017/06/25 6:08 PM |
コメントする










渡辺 葉
NY&NJ attorney
writer
translator
interpreter